Carl Zeiss Ultron 50mm f1.8 というレンズについて

もう買わない、もう買わないと思って買ってしまうのがレンズというものです。
また例によってオールドレンズを買ってしまいました。
今回買ってしまったのはM42マウント版 Carl Zeiss ultron 50mm f1.8 です。
巷では凹みウルトロンと呼ばれてる、アレです。
と、いうことで今回はコチラをレビューしようと思います。
 

 

Ultronという名前について

少しレンズに詳しい人ならば、この名前に少々違和感を抱くことでしょう。
なぜなら、Ultronという名前はCarl Zeissのレンズ名にないからです。
もともとUltronという名前を使っていたのは、世界最古の光学機器メーカーだったVoigtlanderという会社でした。
ところが、20世紀後半に日本の光学製品の台頭によってVoigtlander社は窮地に追い込まれます。
生き残るため、Voigtlander社が選んだ道は、Carl Zeissに吸収されることでした。
Carl Zeissによる吸収の後、かつてVoigtlanderからリリースされたものを手直しして製作されたレンズがこのUltronというわけです。
 

Ultronの特徴

このレンズの最大の特徴は何と言っても1枚目のガラス。
通常ならば凸型になっているはずの一枚目が、凹型になっています。
これは、もともとレンジファインダー用に作られたUltronを一眼レフ用に作り変える際に追加されたもので、バックフォーカスを稼ぐためだったと言われています。(光学的な話はいかんせんよくわかりませんね...いや、分かるんですけど、パッとはしません...)何れにせよ、オリジナルUltronの設計者でもあるトルニエ博士も加わって、何かしらの意図をもって追加したということのようです。
そして、この凹んだレンズが素晴らしい描写に寄与するのか何なのか。実は、ソニーからリリースされている最新のレンズ(SEL55F18Z)の一枚目も凹んでいたりします。
 

実写

さて、Ultronは一体どんな絵を出してきてくれるんでしょう。
今回の撮影にはすべてα7Ⅱを使用しました。(K-1を未だ修理に出せてないので…)
 

一枚目は自宅の中です。これを撮った時、思わず唸ったのを覚えています。ピント面はオールドレンズとは思えないほどにシャープ。にも関わらずピント面から外れた瞬間からボケが生じています。開放なので流石に4隅は光量が落ちていますが、充分補正可能なレベルなので問題はなさそうです。
 

続いては、近所の崖にはう蔦の様子です。ここでもやはりピント面のシャープさは突出していて、葉っぱの模様も余裕で確認できます。本当にオールドレンズなんでしょうか...ただ、被写界深度はかなり狭いようでカミソリとまでは行きませんが、そこそこ気を使いそうだなと、この時は思っていました。

 

今度は夜に持ち出してみました。点光源をつまんでみましたが、まぁ普通かなと。多少周辺がレモン型にはなっていますが。これくらいは現代レンズも大差ないので気になるほどではないですね。

 

とはいえ、さすがにこういう場面は苦手です。解像自体には何の問題もないんですが(実際、中心部に有る首都高の看板はしっかり見える)、派手に滲んでますね。夜景を撮る際には気を付けたほうが良いということでしょう。

 

逆光も激弱です。Carl ZeissといえばT*コーティングが有名ですが、このモデルには適用されていないのです 。流石にノンコーティングというわけではなさそうですが、そのへんは期待してはいけません。とは言え、フレアの形状もきれいなので、これはこれで活かせると良いかもしれません。

 

今回、大体200枚程度テスト撮影をこなしたわけですが、撮影後に画像を確認していると、通常よりもピントがしっかり狙ったところに来ているように思いました。

他のオールドレンズや、Kマウントのレンズをアダプターを介して使用する場合、EVFで拡大をしてからピントを追い込まなければならない場合がほとんどでした。しかし、このレンズの場合は大体ピーキングのみでピントが合わせられるのです。おそらく、ピント面から僅かに外れるだけで急激にボケていくこのレンズの特性が、フォーカスピーキングと相性が良いのかも?と思っています。

何れにせよ、買って大正解な一本でした。

ということで、今回はこのへんで。

いい加減K-1も修理したいところですね。(と言っておきながら、このレンズを買ったためにK-1の修理代が消えたという...)

ではでは